ディマシュ Dimash Kudaibergen


ディマシュ Dimash Kudaibergen – Late Autumn
中国の湖南TVの歌手コンテスト番組「I AM A SINGER:我是歌手2017」に中国以外からは異例の出場を果たしたカザフスタン歌手、ディマシュ・クダイベルゲン(Dimash Kudaibergen)(23歳)がエソピード4(2月)で熱唱した「秋意浓」(=いかないで)です。声楽を学んだディマシュは1992年よりベラルーシで開催されている、スラブ音楽の祭典「国際芸術祭スラビャンスキーバザール」での2015年優勝者として中国に招かれました。中国としては、国のメンツも掛かっていた人気のコンテストであることからか(?)、最終的には二位に甘んじたことは致しかないといったところでしょうか。それはさておき、ディマシュの声域の広さと卓越した感情表現の歌唱力は驚異的と言えます。彼はこの歌に流れる歴史を知り、一週間で中国語歌詞をマスターしたということです。自国、カザフスタンの苦難の歴史を想うとき、この曲が彼にシンパシーを抱かせたのかもしれません。

この歌の元曲は、玉置浩二さん作曲の1989年のドラマテレビ「さよなら李香蘭」の主題歌にもなった「いかないで」です。当時の解放政策による日中友好の機運の高まりもあって、このドラマのヒットがきっかけとなり、中国では、1990年に香港歌手、張學友が別の歌詞「秋意浓:”Autumn Strong””Late Autumn”:=秋の悲しみ、強く、たぎる激しい惜別の情の歌」として歌い大ヒットしました。そして、テレビドラマ放映の影響ともに、戦前の満州、上海、台湾を中心として活躍、人気を拍した女優「李香蘭(山口淑子さん)」の時代に翻弄された数奇な人生にも再び注目が集まり、「李香蘭」イコール曲名ともなって親しまれている、おそらく1990年以降で最も有名な日本の楽曲の一つとなりました。あえて言えば、長らく封印されていた、口をつぐむことを余儀なくされていた人々とっては、初めて感じ得た自由の感覚でもあったと思います。このときの解放政策によって、禁止されていた「夜来香」(イェライシャン)、「何日君再来」などの、現在、中華圏で広く愛唱されている歌曲も復活し、「李香蘭」の名は中国人女優・歌手として再認知されました。そして生前、彼女は中国は「母国」であり、日本は「先祖の国」とも語り、両国の関係改善に尽力しました。自分たちが最も愛した女優を追放してしまった国の人々、時代の大きな潮流とはいえ、自分が最も愛した国を去らねばならなかった女優、取り戻せぬ「時」への自身の回顧といったものとともに、そうした共鳴し合う心情がこの曲によって甦り、いまだに中国の人たちに響くのだとも思います。

次の動画を見ていただくと、中国の人たちがこの曲に寄せる心情を読み取る一助となるかもしれません。

【李香蘭MV】 別走(行かないで)玉置浩二


performances by Dimash Kudaibergen I am singer 2017
ディマシュのコンテスト・パフォーマンス集。
聴衆に艶やかな声質、声域の広さやボイスコントロールの精度を見せてくれました。特に第2ラウンド《ヴィタス(VITAS)のOpera#2》でのパフォーマンスも、エンターテイナーとしての実力を知らしめて圧巻でした。ヴィタスのダークで虚無、頽廃ムード漂うOpera#2の世界観を彼ならではの表現力で楽しませてくれました。このラウンドでディマシュの中国の人気が決定的になったと思います。
ディマシュはこのコンテストの活躍により、カザフスタン共和国大統領から名誉証明書を授与されました。

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