Toby Dammit – “Tre Passi nel Delirio” (1968)

トビー・ダミットToby Dammitは、エドガー・アラン・ポーの原作に基づく、3話からなるオムニバス映画「世にも怪奇な物語」Tre passi nel delirioの第3話。他の2話は、ロジェ・ヴァディム監督の第1話「黒馬の哭く館」“Metzengerstein”、ジェーン・フォンダとピーター・フォンダの兄妹共演。ルイ・マル監督の第2話「影を殺した男」“William Wilson”、アラン・ドロンとブリジット・バルドーの共演。当時の仏・伊の代表監督によるトップスター共演の豪華作品でした。第1・2話も佳作ですが、現代的なアレンジの妙と完成度において、やはりトビー・ダミットが優れていると思います。

トビー・ダミットのポーの原作の副題は「悪魔に首を賭けるな」(創元推理文庫:ポー全集にも入っていました。)で、「悪魔に首を賭けてもいい。」が口癖の男が、ある日出合った男と賭けをして、垣根を飛び越えるという、奇妙な味といえるブラックユーモア風のコントです。ですから、映画の副題「悪魔の首飾り」は、ちょっとイメージが違う感じがします。これは、同じ年にヒットした人気グループザウンズ「ザ・タイガース」の「花の首飾り(1968年3月)」のパクリでしょうか?そうだとすると、安直でちょっと恥ずかしいような気がします。(邦題の付け方は、今でも同じようなものですが…)ちなみに、Dammitは英語の口語[Damn it](ちくしょう!, くそ!, ちえっ!)のもじりです。

トビー・ダミットToby Dammitは、フェリーニ作品では、「8 1/2」1963、「魂のジュリエッタ」1965と「サテリコン」1969の間の監督作品です。短編ですが、フェリーニ壮年期の作風がよく出ていると思います。

トビー・ダミット役の若き日のテレンス・スタンプがアルコール依存症の悪魔(少女)に憑かれたシェークスピア俳優を見事に演じています。クールで繊細な主人公は彼以外には考えられないほどのはまり役です。破滅型の主人公というのは、なかなか魅力があるもので、日本でいえば、東海道四谷怪談の民谷伊右衛門や牡丹灯篭の萩原新三郎などがいますが、フェリーニは怪談話にするのではなく、カリカチュアした風刺的なシーンを盛り込んで、ポーの原作に合わせたシニカルなコントに仕立てています。ポーの小説が映像化される際は、怪奇性の高いものが取り上げられ、ブラックユーモア的なものは少なく、原作に忠実なものが多いと思います。(多くの観客がそれを望むのでしかたありませんが)「世にも怪奇な物語」の他の2話も同様で、原作のストーリーを独自の映像で再現していますが、監督の個性は希薄です。「トビー・ダミット」は、単にストーリーを映像化したのでは、そのままでは、古めかしく退屈になってしまうポーのこの短い小説を、フェリーニ独特の演出で映像化して、現代的な解釈や皮肉を加えることにより、独立した映画作品とすることに成功しています。現代では、このように原作を独自の解釈で映像化した作品は多く作られていますが、大半は失敗作で佳作は少数です。原作の完成度が高いほど難しくなります。それだけに、この手の作品は、監督の才能と手腕が問われる難しいものですが、この作品は数少ない先駆的な成功例だと思います。公開当時は賛否両論ありましたが、主演のテレンス・スタンプとの相乗効果で、他に類のない味わいの作品になっています。

余談になりますが、日本の「世にも奇妙な物語」はその題名から察しがつくように、この「世にも怪奇な物語」の怪奇オムニバスの形式をドラマ化したものです。また、映画に出てくる金色のフェラーリは1964年型の「Ferrari 330 LMB Fantuzzi」」です。

Nino Rota – Toby Dammit – Toby Dammit Theme

ストーリー

英国俳優のトビー・ダミットは、映画製作のためローマ空港に到着する。悪夢をみているような空港ロビーの風景。
彼を待ち構えていた報道陣の眩いフラッシュの光。記者を突き飛ばして、逃げた階段の上。明るい光が苦手だと弁明する。そして、奇妙なポーズでつぶやく言葉。
出迎えの映画関係者たちに誘われて、空港を出る。車の中で、映画プロデューサーは、聖書の贖罪を西部劇化するという映画の主人公に彼を呼んだと言うが、ダミットは今回の招待でもらえるフェラーリにしか興味がない。
車から見る現代ローマの町並みや人々も、ダミットの目には、現実感が無く幻想的ですらある。渋滞する道路で寄ってきた占いの女は、彼の掌を見ると何も言わずに後ずさりして去っていった。
TV番組のインタビューは空々しくダミットには退屈でならない。セレブたちが集まった映画レセプションも空虚で退廃的、滑稽ですらある。ダミットの心にあるのは、空港で見た、白い鞠を持った少女のこと。長く自分を苦しめている幻影だ。シェークスピアの有名な悲劇「マクベス」第5幕のセリフで挨拶したダミットは、長く仕事をしていないと告白して、逃げるように、レセプションを抜け出して、追ってきた人たちを残して、金色のフェラーリに乗り込み、急発進させて去って行く。
深夜のローマを疾走するフェラーリ。迷路のような道。どこをどう走ったのか、やがてハイウェイに入り、猛スピードで走る。突然、通行止めのガードが見えるが、スピードが速すぎて止まれず、突き破ってようやく車が止まる。車を降りると、音を聞いて窓から顔を出した道端の家の男が、橋が落ちて道路は寸断されていると言う。
夜の闇にかすむ落ちたハイウェイの橋。再びダミットは、落ちた橋の向こうに、白鞠を持った少女を見る。少女はダミットに微笑んでいる。
ダミットは、憑かれたように、ハイウェイを飛び越えようと猛スピードでフェラーリを疾走させて、闇の中へ消えて行く。・・・・

↓Nino Rota – Toby Dammit – アルバム・プレイリスト

テレンス・スタンプ:オフィシャルサイト Wikipedia
フェデリコ・フェリーニ:Wikipedia

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です