La Strada Soundtrack – Nino Rota

フェリーニ「道」

フェリーニ「道」は1954年のイタリア映画。ヴェネチア国際映画祭でサン・マルコ銀獅子賞、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した名作です。ニーノ・ロータの哀切なメロディがリフレインして、情景にみごとに溶け込んでいます。フェリーニ映画の特徴である、祝祭の風景は、「道」では、結婚式、宴会、サーカスの旅興行などの点景があります。オート三輪が通り過ぎる、道端の枯れた一本の木や、浜辺などの自然の風景と対比をなしています。
他人を愛する術を知らず、また、愛されたこともない男である、ザンパノの不幸を演じたアンソニー・クイン。他人と自分の幸せのどちらを選ぶべきか悩むキャラクター、ジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナの愛すべき演技。この二人の名演が、映画の点景と重なり合って、人の心と人生の明暗を象徴しているようです。
良心のかけらもない、人(自分自身も含めて)の感情に暗愚で野蛮な男と、自由に憧れながら、束縛と不遇に悩む女性と、ふたりに関わる哲学者のような賢者の道化師。フェリーニのこのロードムービーは、ネオ・レアリズムの手法で綴られ、無駄のないシーンとせりふは、神聖な物語のように人生の寓意に満ちています。ジェルソミーナを知らなければ、ザンパノは粗野であってもそれなりに幸せだったかもしれません。また、ジェルソミーナもザンパノに会わなければ、生きる楽しみや、人を愛することも、その苦しみも知らずにいたかもしれません。人は人との関わりのなかで、喜びも苦しみも知るもの。けれども人の理性と感情は、ときとして矛盾した行動と結果をもたらしてしまいます。そんなことを考えさせてくれる映画です。
これ以上、余計な解説は不要でしょう。この映画は必見のフェデリコ・フェリーニの傑作です!

あらすじ

旅芸人のザンパノ(アンソニー・クイン)は、ジェルソミーナを母親から買う。ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は、半分子供のような女性。不遇な環境のせいで、消極的な性格で従順だが、感じやすい。
二人は、オート三輪に乗って、イタリア各地を大道芸・サーカスをしてまわるジプシーのような暮らし。ザンパノは無口な乱暴者で、ジェルソミーナを怒鳴り、木の枝を鞭に使って芸を仕込む。ザンパノは、酒を飲み、食べ、先のことなど考えない、本能だけで生きているような男。ジェルソミーナは彼を恐れながらも、憧れ、内心では讃美し、彼の役に立とうとつくすが、ザンパノは何も感じない。
ある日、ルイ・マット(キ印)という渾名の、サーカスの芸人が現れる。彼は詩人であり、道化者であり、一種の賢者でもある。彼は孤独なジェルソミーナに同情し、一方でザンパノを嘲笑する。ザンパノは怒る。ザンパノが投獄されて、途方にくれるジェルソミーナに、ルイ・マットは、茶化しながらも、彼女の居るべき場所は、ザンパノの傍らであることを納得させる。すると彼女は、サーカス仲間と別れて、ザンパノの釈放を待ち、再び、自ら恐れるザンパノの束縛を受け入れる。苦労をともにする二人の旅。ある日、二人はルイ・マットに再会するが、ザンパノは怒りにまかせて、彼にとびかかり、彼を死なせてしまう。何日も嘆き悲しむジェルソミーナをおきざりにして、ザンパノは去ってしまう。
何年かの月日がたって、海辺の町を歩くザンパノ。彼に昔の生気はない。彼は、かってジェルソミーナがトランペットで奏でていた、懐かしいメロディを耳にする。そして、見知らぬ女性から、彼女が数年前に死んだことを聞く。
夜。ザンパノはひとり、酒に酔い、仲間とも喧嘩をする。ザンパノは本当に孤独になってしまったことを自覚する。そして浜辺に力なく座り込み、大声を出して泣き出す。

LA STRADA – Official Trailer

シナリオの一部

(ザンパノが監獄に入れられて、ひとり残されたジェルソミーナとルイ・マットの会話・・・)

ルイ・マット「きみの顔はみっともない」
ジェルソミーナ(泣きながら)「わたし生きていて何になるのかしら?」
ルイ・マット「きみ、ぼくと一緒に来るかい?」
ルイ・マット「綱渡りを教えてやるぜ!高いところに立って、明るいライトを当ててもらうのさ!ぼくは車でも何でも持っているよ。きっと面白いぜ。どうだい、一緒に来るかい?どうしようもないね。きみはザンパノと一緒にいて、あいかわらず…いつもと同じ馬鹿げたことをしていたいのさ。そして、いつもされるように、お尻を蹴とばされていたいのさ!・・・これが人生というものか。だけど、きみが何の役にも立たなかったら、ザンパノはきみといしょにいないさ。ねえ、きみが逃げたとき、あいつはどうした?」
ジェルソミーナ「うんと叩かれたわ」
ルイ・マット「何故きみをそのまま逃がしてやらなかたのかな?いや、よく考えてみると、ぼくはきみを連れてゆくのはやめたよ。もし、きみが行きたいと言ってもね。わからないもんだ・・・たぶん、あいつはきみが好きなのかもしれない。」
ジェルソミーナ「ザンパノがわたしを?」
ルイ・マット「あいつは、中身は犬さ。外見は人間の格好をしているけどね。それで、あいつは話をしようとすると、吠えてしまうのさ」
ジェルソミーナ「かわいそうじゃない」
ルイ・マット「かわいそう、もちろんさ。もしきみがあいつと一緒でなかったら、誰が一緒にいてやるかな?ぼくは物知りじゃないけど、ずいぶん本を読んだぜ。だからきみが何と言ったって・・・。この世の中のものは何でも、何かの役に立っているんだ。たとえば、これ、この小石一つにしてもさ」
ジェルソミーナ「どの小石?」
ルイ・マット「ほらこれさ。どれだっていいさ。見てごらん、この小石。これだって何かの役に立っているんだよ」
ジェルソミーナ「何の役に立ってるの?」
ルイ・マット「何って、ぼくは知らないさ。ぼくが知っていたら、ぼくは誰になるか、知ってる?」
ジェルソミーナ「誰?」
ルイ・マット「神様さ。何でも知っている人さ。きみがいつ生まれるか、いつ死ぬのかも知っているのさ。何もかも知るなんて、できないさ。ぼくはこの小石が何の役に立つのか知らないさ。でもこれはきっと何かの役に立っているんだよ。もしこれが何の役にも立っていないとしたら、役に立ちものなんて、何もないのさ。星だって何の役にも立たないのさ。そうさ、きみだって、朝鮮あざみみたいな顔してるけど、そのきみだって何かの役に立っているんだ」

沈黙。それからジェルソミーナは低く笑い出す。ヒステリックな笑いににているが、彼女の精神はほぐれはじめたのだ。彼女の裡に押し込められて、かって表白されたことのない思考の結び目が解けたように、彼女は笑ったり、苦しんだりしながら、話始める。

ジェルソミーナ「わたしね、こんどね、マッチで、みんな燃やしちゃうわ!笑わないで。みんな燃やしちゃうの!そしたらあの人だってわかるでしょ。わたし『この人と一緒に行きたくない』とは、言わなかったの。あの人は家の人たちに一万リラやって、さよならしたのよ。それからわたしは働いて、あの人はぶつの」
ルイ・マットは笑い出す。
ジェルソミーナ「だめね、わたしってだめね。でもあの人に話すの。あの人は何にも言わないの。これで何の役に立つっていうのかしら。あの人のスープに毒を入れてもいいわ!そしてみんな燃やしちゃうの。何もかも!そしたらあの人だって分るでしょ!もしわたしがあの人と一緒にいてやらないとしてら、誰が一緒にいてやるかしら?ねえ?」
・・・

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