Donald Fagen – I.G.Y. (What a Beautiful World)

Donald Fagen – I.G.Y. (What a Beautiful World)

ドナルド・フェイゲンがスティーリー・ダン解散後に発表した初のソロ・アルバム「The Nightfly:ナイトフライ」(1982年)の中の曲です。
「I.G.Y.」とは 、1957年7月から1958年12月までの科学プロジェクト「International Geophysical Year」の略で国際地球観測年のことです。1950年代、60年代初頭までは、科学の発達によってもたらされるであろう、明るい未来へのビジョンが喧伝されました。実はこの「I.G.Y.」の年、1957年9月4日は、ソヴィエト連邦が、世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた年です。人工衛星には冷戦時の大陸間弾道弾、核ミサイルの開発競争という裏の側面がありますが、高度の技術力によって大国の威信、東西陣営のリーダーであることを示すという政治的な理由もありました。そのため宇宙開発において遅れをとったアメリカは、国の威信をかけて、ソビエト連邦を追い越すことに情熱を傾けました。当時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディが1960年台のうちにアメリカ人を月へ送り、無事に生還させると宣言したのもこの頃です。ジョン・F・ケネディの明確なビジョンに多くの人々が賛同し、世の中に希望的な未来のイメージが溢れたのはこの理由によります。そして、その努力が結実し、1969年7月21日にアポロ計画を達成しました。また、当時の人々の努力は、宇宙開発のみならず、地球物理学、通信、交通、応用科学などのあらゆる科学分野に及び、今日の科学の急速な発展に寄与したことは言うまでもありません。

この歌は、そんな、当時の人たちが夢見た、科学の発達による夢のような世界をノスタルジックに歌っています。未来が何もかもバラ色じゃないことは百も承知。でも明るい未来の話をするほうが楽しいじゃないですか。この歌の内容が、子供ぽくって、おとなげないなんて、的外れな批評を言うのはヤボというものです。現に、この歌が作られた80年代には、多くの社会的なひずみが顕在していたのですから。
この歌のノスタルジーは、「I.G.Y.」の頃の過去への郷愁であるとともに、失われた、あるいは実現しなかった未来への夢への郷愁です。ただ、ドナルド・フェイゲンが敢えて「I.G.Y.」の歌で表現したのは、シニカルな現実世界、現代文明が内包している矛盾を覆い隠したうえでの、夢の欠片ではなかったかとも思います。他にこのような歌はありません。ドナルド・フェイゲンの豊かな才能の証です。

最近では、明るい未来像を思い描くことは、思慮に欠ける人間だとでも言うように、暗く、希望の薄い近未来を示すことが流行しています。しかしロケット、ロボット、高速列車などの進歩を促した原動力が、当時の大人だけでなく少年少女の夢と憧れであったことは確かです。明確な未来へのビジョンは人間に大きな力を与えることを現代人は少し忘れているような気もします。ただ、機械化や経済が進んだ世界が快適な世界だとは言えません。環境破壊のない世界で、人間が自然と共存する未来への新しいビジョンが現在には必要です。これだけ文明が発達したのですから、同じようにこれからは文化が発達する夢と憧れをみんなが持てれば、もっと美しい世界がやってくる(a beautiful world this’ll be)と思います。物質に支配される世界(Materia World)を仏教では「煩悩」と言いますが、もう「煩悩」に縛られない別の選択の世界の姿を夢見たいと思います。誰かそんな夢のある素敵な歌を作ってくれないでしょうか?

「The Nightfly」はアルバム全体がシニカルなユーモアとジョークを散りばめた世界。大人になった少年のための音楽です。「いい大人なんだから、このシャレ分かるだろ?」と言われている気がします。

I.G.Y. (International Geophysical Year)歌詞

Standing tough under stars and stripes
We can tell
This dream’s in sight
You’ve got to admit it
At this point in time that it’s clear
The future looks bright
On that train all graphite and glitter
Undersea by rail
Ninety minutes from NewYork to Paris
Well by seventy-six we’ll be A.O.K.

What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free

Get your ticket to that wheel in space
While there’s time
The fix is in
You’ll be a witness to that game of chance in the sky
You know we’ve go to win
Here at home we’ll play in the city
Powered by the sun
Perfect weather for a streamlined world
There’ll be spandex jackets one for everyone

What a beautiful world this’ll be
What a glorious time to be free

On that train all graphite and glitter
Undersea by rail
Ninety minutes from NewYork to Paris
(More leisure for artists everywhere)
A just machine to make big decisions
Programmed by fellows with compassion and vision
We’ll be clean when their work is done
We’ll be eternally free yes and eternally young

What a beautiful world this’ll be
What a glorious time to be free…..

I.G.Y. (International Geophysical Year) 意訳

星条旗の下しっかりと立ち
我々は告げることができる
あなた方は認めるざるを得ない
この時点ではそれは明らかだ
この間近な夢を
未来は明るいように見える
電車に乗ればすべてグラファイトに輝き
海底の鉄道で
およそ90分でニューヨークからパリまで
まあ76分で大丈夫になるだろう

What a glorious time to be free
何んと栄光の時代がやってくる
何んと栄光の時代がやってくる

あなたのチケットを手に入れてそのスペースの列車へ
しばらく時間があって
腰を据えるのさ
あなた方は証人になるだろうその空でのゲームのチャンス
あなた方は知っているよね我々が勝つって
ここは家にいるよう私たちは都市でプレイ
太陽のパワーで
合理化された世界のための完璧な天候
すべての人にスパンデックスジャケットがあります

何んと素晴らしい世界になるのだろう
何んと栄光の時代がやってくる

その電車に乗ればすべてグラファイトに輝き
海底の鉄道で
およそ90分でニューヨークからパリまで
まあ76分で大丈夫だろう
(どこのアーティストにとってはもっとお楽しみ)
たったひとつのマシンが大きな意思決定
おもいやりとビジョンを備えている人たちにプログラムされてます
私たちは彼らがやってくれるので清潔になるだろう
私たちは永遠に自由そして永遠に若いまま

What a beautiful world this’ll be
What a glorious time to be free…..

何んと素晴らしい世界になるのだろう
何んと栄光の時代がやってくる

ドナルド・フェイゲンWikipadia

One thought on “ドナルド・フェイゲン「I.G.Y.」 [歌詞和訳] : Donald Fagen”

  1.  この曲、1980年代の短波放送局 KYOI(キョイ)で何度も流されました。フェージング混じりで聞こえたこの曲、実に良かったです。数年前、タイトルをやっと探し当てました。しかし、I.G.Y.って何だろうという疑問は残ったままだったのです。貴ブログを拝見して謎が氷解しました。50数年来のラジオ少年&ハムですから、IGY(地球観測年)については昔から知っておりました。感謝、感謝です。
    KYOIで流れた曲、現在も聴けます!不思議ですね。
    http://www.kyoi.ru/sam/web/index.php
    トップページの右上の回線速度(96kbps,48kbps、24kbps)を選び、プレイやー(Windows Media Player)かWinAMpをセレクトすると、聴くことができます。1984年代の曲が多いです。24kbpsは明らかに音質が落ちますが、48kbpsか96kbpsならいい音で聴けます。
     KYOIは当時、最新のロックを放送するので、日本にも沢山のファンがいました。諸事情で閉局してしまいました。フェージングが多い短波で音楽?と不思議に思われるかもしれませんが、極めて強力に入感していましたので、それなりに楽しめました。
     これを機会に今後も訪問させていただきます。

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