私の青空 My Blue Heaven – Gene Austin (1927)

私の青空 – My Blue Heaven

「私の青空」は、ポップスのスタンダードナンバー。海外では、グレン・ミラー楽団、コールマン・ホーキンス、ファッツ・ドミノ、ビング・クロスビー、フランク・シナトラ、マット・デニス…数え切れないほどの歌手がカバーしています。
この歌は1928年にジーン・オースティンの歌で大ヒットしました。ジーン・オースティンは、この歌を抑揚を抑えた声で、殊更に感情を歌い上げることをしていません。そこが、この歌の「家族のささやかな幸せ」というテーマに合っています。
日本では、1928年(昭和3年)堀内敬三の歌詞を浅草オペラの二村定一が歌って紹介されました。「アラビアの唄」とのカップリングで、レコードもヒットしました。浅草が日本で最大の盛り場であった頃のことです。二村定一は浅草オペラのコーラスボーイだったエノケンこと、榎本健一とともに、軽演劇団「カジノ・フォーリー」を作った人です。「カジノ・フォーリー」はスピード感ある踊りと音楽、おしゃれな演出と笑いで人気がありました。堀辰雄の「水族館」や川端康成の「浅草紅団」などを読むと、当時の雰囲気が伝わります。話が逸れそうですが、当時、日本でもジーン・オースティンのヒットとほとんど同時に紹介されていたことは驚くべきことです。日本とアメリカを行き来するには、長い船旅をしなければならない時代に、アメリカの文化・流行が日本に直ぐに伝わり、吸収されていたのですから。

二村定一が明るく歌う「私の青空」は、日本人の庶民感覚とマッチして、これが日本でのこの歌の印象を決定付けました。堀内敬三の歌詞は、原曲の日本人の「家族の幸せとやすらぎ」に対する感覚を見事に表現していますが、一方で、原曲の歌詞とは意味が異なったイメージを与えてしまいました。日本人にとっては、「青空」のほうが晴々とした幸福を感じるものですが、堀内敬三が「Blue Heaven」直訳すれば「青い天国」を「青い空」としたために、人々に日中の晴れわたる青空を連想させてしまったのです。しかしキリスト教徒ではない日本人に「私の青い天国」の題名では受け入れられるはずもなく、相当に苦慮したであろうことは想像できます。堀内敬三は原曲通りの夕闇せまる中、やすらぎと愛しい妻と子供が待つ家路を急ぐ幸せな気持ちを訳したのですが、どうしても「青い天国」の適当な訳が見つからず、敢えて「私の青空」の言葉を選択したのだと思います。そういう訳で日本語歌詞は、堀内敬三にとっての「私の青空」というのは心の中の「青空=我が家、守るべき家族」と考えるとしっくりすると思います。
で、原曲は夕闇が迫る、家族が集う安らぎ時を「闇に包まれる前の、空間が青く感じられる、そして天国の存在を感じるほどの幸せな場所=Blue Heaven」と表現しています。この青は群青色・濃紺に近いもので、おそらくアメリカ人が安らぎを感じる色です。ブルーと言うと「憂鬱」を連想しがちですが、ここは(タバコの)パーラメント・ブルーやラプソディ・イン・ブルーのイメージです。この辺は日米の色彩感覚の違いでもあるようです。とは言え、「せまいながも 楽しい我が家…」の訳詞はこの歌の意味を日本語に凝縮した素晴らしい名訳であることは変わりません。

私の青空 My Blue Heaven 1928 二村定一 天野喜久代

私の青空 My Blue Heaven (1927)
作詞:George Whiting、作曲:Walter Donaldson
日本語詞:堀内敬三、唄:二村定一/榎本健一

夕暮れに仰ぎ見る 輝く青空
日暮れて辿(たど)るは わが家の細道

せまいながらも 楽しい我家
愛の灯影(ほかげ)の さすところ
恋しい家こそ 私の青空(繰り返す)

私の青空 My Blue Heaven(歌詞)

Day is ending, birds are wending
Back to the shelter of
Each little nest they love

Nightshades falling, lovers calling
What makes the World go round
Nothing but love

When whippoorwills call
And evening is nigh
I hurry to my Blue Heaven

I turn to the right
A little white light
Will lead you to my Blue Heaven

A a smiling face, a fireplace, a cosy room
A little nest that nestles where roses bloom

Just Molly and me
And baby makes three
We’re happy in my Blue Heaven

(Orchestral Break)

A a smiling face, a fireplace, a cosy room
A little nest that nestles where roses bloom

Just Molly and me
And baby makes three
We’re happy in my Blue Heaven

(Whistling)

A smiling face, a fireplace, a cosy room
A little nest that nestles where roses bloom

Just Molly and me
And baby makes three
We hurry to my Blue Heaven

私の青空 My Blue Heaven(訳詞)

一日が終って、鳥たちは隠れ家に帰ってゆく
それぞれの愛する小さな巣に

夜の帳が下りて、恋人たちは呼び合う
世界を廻しているのは
ただ愛なのさ

ホイップアーウィルヨタカたちが鳴いている
夕暮れが近い
私は私のBlue Heaven(青い天国)に急ぐ

右に曲がると
小さな白い光が
君を私のBlue Heaven(青い天国)に導く

笑顔と、暖炉と、居心地のよい部屋
バラの花が寄り添う小さな巣

モリーと私
そして、赤ちゃんと三人きり
私のBlue Heaven(青い天国)で幸せ

(オーケストラブレイク)

笑顔と、暖炉と、居心地のよい部屋
バラの花が寄り添う小さな巣

モリーと私
そして、赤ちゃんと三人きり
私のBlue Heaven(青い天国)で幸せ

(口笛)

笑顔と、暖炉と、居心地のよい部屋
バラの花が寄り添う小さな巣

モリーと私
そして、赤ちゃんと三人きり
私のBlue Heaven(青い天国)で幸せ

Norah Jones – My Blue Heaven

私の青空(歌)Wikipedia
My Blue Heaven (song)Wikipedia

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