今回の記事は料理に喩えれば、上等な素材は味付け次第で何度も楽しめるという例です。俎上に上がったのは貴方も知っている有名な歌、「愛のよろこび」と「好きにならずにいられない」です。

イボンヌ・プランタン:Yvonne Printemps sings Martini’s Plaisir d’amour
イボンヌ・プランタンの歌は、クラリス・ド・フロリアン(Claris de Florian:1755-1794)が書いた原曲に近いものです。歌の内容は、シルビアという女性のために全てを捨てた、彼女は野原に小川が流れる限り愛すると言ったのに、心変わりしてしまった。そして「愛の喜びは、瞬く間のこと、愛の悲しみは一生続くもの。」というものです。フロリアンによると山羊飼いの歌ということですが、確かに古い歌によくある、牧歌的な雰囲気と人生の教訓を含んだ素朴さがあります。

愛のよろこび plaisir d’amour
(グーグル翻訳も精度が上がってきました。充分に歌詞が分かるので訳しません。)

Plaisir d’amour ne dure qu’un instant
Chagrin d’amour dure toute la vie
J’ai tout quitté pour l’ingrate Sylvie
Elle me quitte et prend un autre amant

Plaisir d’amour ne dure qu’un instant
Chagrin d’amour dure toute la vie.

Tant que cette eau coulera doucement
Vers ce ruisseau qui borde la prairie
Je t’aimerai me répétait Sylvie
L’eau coule encore elle a changé pourtant…

Plaisir d’amour ne dure qu’un instant
Chagrin d’amour dure toute la vie.

リナ・ケティ:Plaisir d’amour – Rina Ketty 1939
リナ・ケティのバージョンは女性の立場に変えて、愛を失った悲しみと、他の誰かに心を移した相手に憤りを感じながら忘れられず、夜になると昔を思い出してしまうという内容です。原曲の素朴な感じは薄れていますが、シャンソンとしては洗練されたものになっています。タンゴ調のアレンジは当時の流行ですが、主人公の揺れ動く感情を表現した曲調とよくマッチしています。

リナ・ケティ(1939年)

Plaisir d’amour ne dure qu’un instant
Chagrin d’amour dure toute la vie

J’avais mis ma confiance dans tes mains
Nous vivions insouciants sans songer à demain
Et pourtant notre tendre roman
Par ta faute aujourd’hui vient mourir bêtement
Maintenant je sais qu’un autre a pris ma place
Comme je sais qu’un autre a pris ton cœur
Tristement mon beau rêve s’efface
Adieu, je n’aurai qu’amertume et rancœur

Plaisir d’amour ne dure qu’un instant
Chagrin d’amour dure toute la vie

J’espérais oublier que j’aimais
Mais hélas le destin nous unit à jamais
Ton image revient chaque jour
Tourmenter, torturer, angoisser mon cœur lourd
Et j’avais traînant comme une lourde chaîne
Les souvenirs de nos anciens émois
C’est pourquoi j’ai parfois tant de peine
Les soirs où j’évoque le temps d’autrefois

キャサリン・マッキノン:Plaisir d’Amour by Catherine McKinnon
キャサリン・マッキノンは、カナダのフォーク・ポップ歌手です。(セクシャルハラスメント・性差別問題で有名な法学者、フェミニストのキャサリン・マッキノン教授とは同名異人です。念のため。)
リナ・ケティのバージョンの歌詞を分りやすい英語に訳しています。原曲のメロディを活かした美しいバラードになっています。

エルビス・プレスリー Can´t Help Falling In Love
1961年の映画 ブルーハワイの挿入歌、エルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」です。この歌はもはやカバーソングではありません。原曲のメロディを引用していますが、曲調・歌詞ともにオリジナリティが高く、まったく別の歌へと見事に昇華されていました。「愛のよろこび」はハッピーソングではなく失恋の歌ですが、「Can´t Help Falling In Love」は片思いのときめきを歌っています。

名曲はいろいろと作り直しても、やはり名曲ということでしょうか。

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