1.

第1プロムナード Promenade
プロムナードは、ムソルグスキーが展覧会場を移動している描写です。曲の中で繰り返し奏でられますが、期待感や絵から受けた感動の余韻、気持ちの切り替えなどを表現しながら、巧みに変化しています。また、この組曲を聴く人にとっては、次の曲へのアプローチとして、起伏に富んだ組曲全体の統一感をもたらします。
第1プロムナードは、ごく自然な歩調で展覧会場を進んで行きます。
小人 (グノムス)Gnomus
グノムスは、ロシアのおとぎ話に登場する小人です。そのユーモラスな姿とグロテスクな雰囲気を描いています。
第2プロムナード Promenade
グノムスの絵を見た余韻を沈めるかのように、次の絵に足を進めます。
古城 Il Vecchio Castello
やや朽ち果てた古城の静かな情景です。日本の「荒城の月」に通じる古への哀惜が感じられます。絵の前から立ち去りがたい気持ちが感じられます。
第3プロムナード Promenade
気持ちを取り戻すようなプロムナードです。
テュイルリーの庭 Tuileries
テュイルリーはパリの庭園です。少し明るい晴れやかなスケッチです。

2.

ビドロ Bydlo
ビドロは牛の群、またはポーランドの虐げられている人々を指します。「ビドロはいま は牛車ということにしておこう」という言葉をムソルグスキーは残していますので、暗く激しい感情表現は、家畜のように虐げられた人々への同情を表現しているものと思われます。ただ、それは当時のロシアではタブーでした。
第4プロムナード Promenade
ビドロの絵から受けた感動を引きずりながらのプロムナードです。
卵の殻をつけた雛鳥の踊り Ballet des Poussins dans leurs Coques
バレエの衣装のためのユーモラスなデザイン画です。舞台ではこんなふうにユーモラスになるのかな?という気持ちを現しています。
サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ Samuel Goldenberg und Shmuyle
副題は「ふたりのユダヤ人~太った男と痩せた男」で、金持ちと貧しい男の対比です。感情がぶつかり合う会話を表現しているようです。
第5プロムナード Promenade
いくつかの絵を見た感動を、どのように自分の中で整理しようかとしているムソルグスキーが見えるようです。絵から受けた感動を忘れたくはないし、次の絵も見たいという気持ちは、展覧会を訪れる人なら誰もが持つものです。

3.

リモージュの市場 Limoges – Le Mrche
フランス中部の町リモージュの市場の風景。女性たちが賑やかに会話しています。止まらぬおしゃべりを快活に描いています。
カタコンベ – ローマ時代の墓 Catacombae Spulchrum Romanum
カタコンベとは、ローマ時代に弾圧されたキリスト教徒の地下の墓場のことで、陰鬱な雰囲気が伝わります。悲しみと怒りの感情表現と言えます。
死せる言葉による死者への呼びかけ
プロムナードの変形ですが、カタコンベの感動から逃れがたい気持ちが表現されています。気持ちが落ち着くまでは次の絵まで進めないという雰囲気があります。

4.

鶏の足の上に建つ小屋 – バーバ・ヤーガの小屋 La Cabane sur des Pattes de Poule
バーバ・ヤーガはロシア民話で、風見鶏の上の小屋に住む魔女で、人骨の垣根や頭蓋骨を小屋の飾りにしています。しかし曲調は陰惨というより不気味ではあるものの、好奇心に満ちた想像を楽しんでいるかのようです。
キエフの大門 La Grande Porte de Kiev
皇帝アレクサンドル2世の暗殺未遂事件を祝す記念に、キエフ市が「勇者の門」を再建するための、設計コンテストのための絵です。壮大な雰囲気を持った曲です。
友人の遺作展覧会から、親しかった友人を偲び、その才能を讃美し、そして惜しむかのように立ち去りがたいプロムナードを奏でながら曲が終ります。

【解説】・・・・・・・・・・・・

サンクトペテルブルグで開催された、友人のヴィクトル・ハルトマン(画家兼建築家)の遺作展に感銘を受けたムソルグスキーは、1874年に「展覧会の絵」のピアノ曲を書き上げました。それは親しかった亡き友への追悼でもあります。(詳しくはWikipediaを参照してください。)
ムソルグスキーは絵画の才能もあった人で、この「展覧会の絵」ではその才能が音楽で表現されています。展覧会で素晴らしい絵を見た感動は、なかなか言葉では表現し難いものですが、ムソルグスキーはそれを音楽で見事に表現しました。プロムナードを含めて、言葉よりも雄弁に感動を伝えています。一枚の絵からこれほど豊かなイメージを拡げることは誰もが出来ることではありません。
「展覧会の絵」は、ラヴェルの華麗な編曲で有名ですが、ムソルグスキーが書いた原曲にもっとも近いものは、やはりリヒテルの原典版ピアノ曲です。リヒテルの驚異的なテクニックはもちろんですが、ロシアの風土やムソルグスキーの友人への想いまで表現しているクラシックの歴史に残る名演奏です。「展覧会の絵」はまずこれを聴いてから、他のアレンジを楽しみましょう。

「展覧会の絵」のアレンジで、特に独創的なものはエマーソン・レイク&パーマーのロック・バージョンです。これは原典版ピアノ曲の詩想的な雰囲気や、ラヴェル版の華麗荘厳なものとは異なるイマジネーションに満ちています。リヒテルが聞いたら眉をひそめそうですが、ムソルグスキーが友人の絵から感銘を得て「展覧会の絵」を創作したように、エマーソン・レイク&パーマーはムソルグスキーの「展覧会の絵」から感銘を受けて、新しい自分たちの「展覧会の絵」を創作したものと言えます。
「展覧会の絵」はダイアモンドの原石と称されています。この作品は、これからも音楽家のみならず、多くの芸術を志す人々に影響を与えてゆくクラシック音楽の傑作です。

emerson, lake and palmer pictures at an exhibition full video

ELP Pictures At An Exhibition ’71

プロムナード Promenade (Mussorgsky)
こびと The Gnome (Mussorgsky-Palmer)
プロムナード Promenade (Mussorgsky-Lake)
賢人 The Sage (Lake)
古い城 The Old Castle (Mussorgsky-Emerson)
ブルーズ・ヴァリエイション Blues Variation (Emerson-Lake-Palmer)
プロムナード Promenade (Mussorgsky)
バーバ・ヤーガの小屋 The Hut Of Baba Yaga (Mussorgsky)
バーバ・ヤーガの呪い The Curse Of Baba Yaga (Emerson-Lake-Palmer)
バーバ・ヤーガの小屋 The Hut Of Baba Yaga (Mussorgsky)
キエフの大門 The Great Gates Of Kiev (Mussorgsky-Lake)
ナットロッカー Nut Rocker (Kim Fowley)

展覧会の絵Wikipedia
スヴャトスラフ・リヒテルWikipedia
展覧会の絵 (ELP)Wikipedia

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