京劇西遊記「孫悟空三打白骨精」

2004年に中華人民共和国建国55周年を記念して招かれ、日本各地で公演した湖北省京劇院の京劇西遊記「孫悟空三打白骨精」の全編がYouTubeにありました。湖北省京劇院の「孫悟空三打白骨精」は、伝統的な京劇にいろいろなエンターテイメントの要素を取り入れた現代的なアレンジです。とくに京劇に詳しいわけでもないのですが、とても好きな演劇なので鑑賞するページを作りました。YouTubeを見るには、上の画像かその下のリンクで新しいページが開きます。

アップされている動画は中国語ですので、下に登場人物(妖怪?)とあらすじを載せておきます。概ねのあらすじを知っておくだけでも充分に内容は分りますが、歌や掛け合いを楽しむために、あらすじが長くなりました。京劇に興味があっても、なかなか観劇の機会がなく、中国語ということで敬遠しがちですが、この作品は西遊記の有名な挿話を題材にしたもので、歌あり、踊りあり、笑いあり、アクロバットのような活劇(武功)ありの娯楽要素満載の内容で、白骨精役の張慧芳は美人で歌声も柔らかく伸びやかで張りがあり、悪女妖怪ながら、この劇の魅力的なヒロインです。視線や指先の表現なども見所です。
孫悟空と三蔵法師の師弟の固い絆や孫悟空・猪八戒・沙悟浄の友情など、伝統的な京劇に新しい要素を加えて発展した現在の創作劇ですので、子供から大人まで楽しめます。是非ご鑑賞ください。ちなみにこの動画は来日公演のときと同じ演出ですので、観劇された方にも懐かしいと思います。

登場人物

三蔵法師【呉長福。小生。国家二級俳優】
孫悟空【程和平(チョン・ホーピン)。武生。国家一級俳優:脚本・演出】
白骨精【張慧芳(ジャン・ホイファン)。青衣・花旦。国家一級俳優】
猪八戒【周琥。丑。国家一級俳優】
沙悟浄【舒建礎。架子花臉。国家一級俳優】
村娘【李蘭萍。花旦。国家一級俳優】
老婦人【易艶。老旦。国家一級俳優】
老人【羅会明。老生。国家一級俳優】
その他、中国湖北省京劇院のみなさん
(小生。武生。青衣・花旦。丑。架子花臉。花旦。老旦。老生。などは役柄。大きな分類では、「生」は男性、「旦」は女性、「丑」は道化役、「架子花臉」は隅取役。小分類では「小」は二枚目役、「武」は立ち回り役、「青衣」は主演女優、「花」は娘役、「老」は老け役。)【2004年の日本公演の猪八戒は朱世慧(ジュ・シーホイ)でした。】

あらすじ(視聴ページにも掲載していますので、動画を見ながら読んでください。)

第一幕

旅を行く三蔵法師一行。

妖怪どもにさらわれていく老人、老婦人、村娘。

妖怪の洞窟。妖怪の子分たちと村娘。舞台中央に白骨が現れ、暗転して美しい白骨精に変る。
白骨精「白骨に変じて人となり、生血をすする。三蔵法師をつかまえて肉を食らえば不老長寿」
番頭格の二妖怪「三蔵法師が山の麓にきています。」と早速に捕らえよう進言するが、白骨精は「三蔵法師には神通力を持った強い弟子がいる。お前たちの相手ではない。」と制する。「それは誰ですか?」と二妖怪。白骨精が答える「天宮で大暴れした斉天大聖、孫悟空!」、二妖怪「それではこのままじっとしているのですか?」、白骨精は大笑いして、「暴れ猿の神通力は天をも恐れぬが、私とて負けてはいない。早まらず洞窟を守り、命令を待て。策をめぐらして、三蔵法師を捕らえる」と答える。

「はるかに連なる険しい道のり、胸の不安抑え難し、阿弥陀仏」孫悟空が登場。続いて三蔵法師たち。三蔵法師「お経を求めて困難を恐れず進む。」「あたりは人の気配なく、空腹耐え難し。馬を下り悟空に相談してみよう。」、悟空「お師匠様、この山はあやしい霧に包まれ、妖怪が潜んでいそうです。注意しなければなりません。」猪八戒「妖怪などいるものか。すきっ腹をどうにかしなければ。」、沙悟浄「孫悟空の言うとおり、この山は不気味な気配。」、三蔵法師は、悟空に山を偵察し、食べ物をもってくるよう命ずる。陰に隠れて様子をうかがう白骨精。妖しい気配を感じた悟空は、地面に結界の円を描き、猪八戒に「円に入って出るな。お師匠様を守り、誰が来ても話すな、食べ物を見ても食べるな。決して油断するな。俺が帰ってきたら出発だ。」と言い渡し出かけてゆく。

「変化の術で姿を変え、様子を探る。」村娘に化けた白骨精がやって来て、「妖怪と人間を見分けられないやつらを惑わし、罠にはめよう。」と近づくが、円には入れない。そこで花で誘い、「食べ物で誘い、釣り上げよう。」と猪八戒を饅頭で誘惑。円から出てしまう猪八戒「腹がぐうぐうなっている。妖怪?妖怪じゃないよ、私たちはお経をを求めて旅する僧侶です。縁起の良い人相でしょ。口が突き出て食べるものに困らない。」、村娘「妖怪なんて言ってしまって気になさらないでね。」、猪八戒「気にしません。こんな険しい山中で疑心暗鬼になったらあなたまで妖怪かと思いますよ。怖がらないで、あなたは妖怪ではないし、私たちも妖怪じゃありませんよ。」、村娘と猪八戒の会話、「そこに座っているお坊様はどなた?」、「私の弟子です。」「お名前は?」「三蔵法師。」「三蔵法師!」「ご存知ですか?」「いいえ…。それよりどうしてこの先のお寺に行って休まないのですか?」「お寺があるんですか?」「はい」「お布施の食事は?」「和つぃと一緒に行って、どうぞ召し上がれ。」「いいぞ、お師匠様に伝えよう!」「さっき弟子だと言ってましたが?」「お師匠様?弟子?…意味は同じようなもの。」
三蔵法師をうながす猪八戒。孫悟空を待とうと言う沙悟浄。円から出てしまう三蔵法師。三蔵法師「阿弥陀仏。娘さん、この山にお住まいですか、お寺はどこですか。」村娘「家は南山(なんざん)の榴花村(りゅうかそん)。父も母も仏門に帰依。私は天王寺に食事を届けるところです。」「案内して頂こう。」「さあ、一緒にいきましょう。」折りよく桃の実を持って、帰ってきた悟空は村娘を妖怪と見破り、一撃で打ち倒す。白骨精は、村娘の死体をその場に残して逃げ失せ、妖怪の実体が逃げるのを追う孫悟空。残されは村娘を見て、「悟空は大胆にも人を殺めた。」と三蔵法師は嘆く。
逃げた白骨精が現れ、「見破られたが、再び化けて三蔵法師を捕らえよう。」

次に白骨精は再び老婦人に化け「娘や!」、猪八戒と老婦人「おばあさん。誰かをお探しですか?」、「私の娘を。」「小かごを提げてお布施の食事を届けに行く?」「娘はどこ?」「それは…、お師匠様、あの娘さんのお母さんが探しにきました。」老婦人「お坊様、私の娘を知りませんか?」「なんと!」「娘はどこ?娘はどこ!」…横たわる村娘を見つけて「娘や!」「見れば娘はこと切れている。」
娘を殺されたと恨み言を言いながら、「娘がいなくては生きる甲斐もない。人殺しの罪、深きこと海のごとし。悪い坊主め!罰を受けなさい。」沙悟浄と猪八戒「お師匠様ではありません。」老婦人「人相が悪いやつ。おまえか!」「人一人が死んだのだから、一緒に村へ行き、きちんと調べなければ。」と三蔵法師を連れて行こうとする。「かわいそうな我が娘。」三蔵法師「悲しむ姿に心が痛む。悟空の罪は、私の罪…。ご婦人よ、弟子の犯したこと、私が罰を受けましょう。」、老婦人「それでは一緒に村へ行き、娘を弔いましょう。(小手先の策略で大成功)」、そこへ孫悟空が帰ってきて、「懲りないやつめ!」とまた、一撃で打ち倒してしまう。三蔵法師と孫悟空「母娘二人を殺めるとは!」「お師匠様、私を責めないでください。私が打った母娘は、一匹の妖怪が化けたものです。」
猪八戒に止められて孫悟空は妖怪を逃がしたと言うが、猪八戒は死体はここにあるのにと反発。孫悟空「死体を置いて逃げたんだ。」、猪八戒は納得せず、沙悟浄は妖怪だと孫悟空に味方する。猪八戒は三蔵法師に証拠の品だと数珠を見せる。三蔵法師は「粗暴な心が未だ消えず、殺生をしておきながら詭弁で騙そうとしている。」と孫悟空を責める。孫悟空は「この荒地は人気もないのに、若い娘が来られるでしょうか?白髪の老女が来られるでしょうか?妖怪の仕業です。よく調べてください。」と懇願する。三蔵法師は思い悩んで「では、村があったら、よく聞いてみよう。しかし、また人を殺めたら決して許さないぞ。」と答える。死体を葬るよう命じて立ち去る三蔵法師と猪八戒。沙悟浄は「妖怪は打つべきだが、ご命令には逆らえぬ。師弟の仲が裂けては、経典も求めがたい。」と孫悟空を慰める。
一人残った孫悟空「妖怪に二度も逃げられた。お師匠様は人と妖怪の区別がつかぬ。妖怪を打たねばお師匠様があぶない。しかしまた打てばお師匠様は許さない…。ひとりで山に探しに行こう。」

白骨精登場。「猿がいては正体を隠し難い。二度も化けたが無駄だった。三度目は心を攻めて気をくじく。」
白骨精、今度は老人に化けて「老人に化けて、坊主の哀れみを誘い師弟の恩を断ち切ってやる。杖をつき、山を下りる。」孫悟空登場。「孫悟空様だ。俺は怒っているぞ。お師匠様を襲った妖怪め、俺の目はごまかせないぞ!」と老人を打ちすえようと戦っているところへ三蔵法師たちが来る。三蔵法師は殺生で仏門を汚すなと孫悟空を止める。悟空と三蔵法師「正体は妖怪です。騙されないでください。」「たとえ妖怪でも改心を勧めればよい。」「妖怪に改心を勧めていたのでは、お師匠様があぶない。」猪八戒「さっきは険しい人がいるはずがないと、村娘や老夫人を殺してしまったが、ここに農家がある。それでもこの老人が妖怪だと言うのか?」老人「妻と娘を失って、生きる気力もない。この無念を晴らしてください。」三蔵法師「経典を求める者は善行すべし。仏の道は慈悲の心だ。」聞き入れない孫悟空の頭の「たが」呪文を唱えて締める三蔵法師。孫悟空はその痛みをこらえながら、「たとえ呪文で死んでも妖怪を生かしておけぬ。」と老人である白骨精を三度を打ち倒す。「仏の心は慈悲。殺生は厳禁。逆徒を甘やかせば、経典求め難し」と書いてあるお札が下りてくる。仏様の教えだと思った三蔵法師は孫悟空に破門状を書いて渡してしまう。しかしこれは、師弟の仲を裂くための白骨精の巧妙な策略だった。
破門状を見て胸が裂かれる思いの孫悟空「心は痛み涙があふれる。止まらぬ涙が滴る。」妖怪の巧みな変化を三度とも退けたが、お師匠様は慈悲深すぎて破門状を受けてしまったと嘆く。猪八戒と沙悟浄は三蔵法師に「破門を許してください。誰が妖怪を退治するのですか。」三蔵法師「師弟の恩情は断ち難い。水の流れを断ち切れぬのと同じ。しかし、仏の裁きには逆らえない。」と孫悟空に花果山水簾洞に帰るように言う。猪八戒と沙悟浄、三蔵法師も別れ難い気持ちを抑えつつ、孫悟空は故郷である花果山水簾洞へ帰って行く。
孫悟空が去ると、たちまち白骨精の部下の妖怪たちが現れ、三人を襲う。隠れた猪八戒だけは逃げのびたが、三蔵法師と沙悟浄は連れ去られてしまう。白骨精「母上をお招きして、三蔵法師を賞味するぞ!」

第二幕

「身は水簾洞にあれど、心は僧のもとにあり」
花果山水簾洞では、猿たちが久々の大王の帰還にはしゃぎ回っている。しかし、当の孫悟空はやはり三蔵法師たちが心配である。すると猪八戒が現れる。猪八戒は三蔵法師を助けられるのは孫悟空の力が必要だと、花果山水簾洞まできたのだ。「花果山はきれいですね。リゾートみたいだ。」「どちらさまですか?」「水臭い。猪八戒ですよ。」「天蓬大元帥(てんぽうだいげんすい)殿でしたか。」「八戒。八戒。八戒ですよ。かしこまれないでくださいよ。孫の行者。」「行者という名前はない。」「お師匠様が付けてくれた法名ですよ。知らないとは言わせない。」「俺にお師匠様などいない。」「なんて罰当たりな!お師匠様は兄貴を想って、眠っていても悟空悟空と。」「それは寝言だろ!」「昼に想い、夜夢を見るって言うだろ。夜想っていれば昼はなおさらだ。早くお師匠様に会いに行こう!」「お師匠様は元気か?」「俺が守っているからお師匠様も沙悟浄も元気さ。」「そうか…お見送りしろ。」「お見送りなんて結構だよ。兄貴がいないと天竺にも行けず、お経もいただけず、地球も回らないってのかい。二度とくるものか。」と立ち去る。孫悟空は拍子抜け。すると猪八戒が戻ってきて「兄貴がいないと地球が回らないんだ。お師匠様も沙悟浄も妖怪にさらわれたんだ。」と三蔵法師たちの窮状を訴える。孫悟空の名を言ったら、妖怪たちは大笑いし、「小さい猿め、度胸も腕っ節もダメで、おじけづいて山に帰った。…」と孫悟空を怒らせることに成功。「頭にきた。だけどもうお師匠様はいないから、兄貴は斉天大聖におさまって、俺は嫁のところに帰るよ。お師匠様のことは残念だけどしかtないよ。」と立ち去ろうとすると、「戻って来い!」と孫悟空。「戻ったよ。」「俺様と一緒にお師匠様をお救いするんだ。」「それ本気?」「行こう!」意を決してふたりは三蔵法師救援に向かう。

ここは白骨精の洞窟の入り口。やってきた孫悟空と猪八戒。手分けして三蔵法師を探すことに。分かれたとたんに猪八戒は、白骨精の部下に見つかり、多勢に無勢、捕らえられてしまう。

娘を訪ねてきた白骨精の母親、金蟾大仙(きんせんだいせん)「私の娘はたいしたもんだ。三蔵法師を捕まえた。これで私も不老不死。」と大喜び。ところが孫悟空の術で、お供の妖怪と一緒に金縛り。孫悟空は分身とともにこれに化けて、洞窟の中に入ってゆく。洞窟の中では、金蟾大仙に化けた孫悟空はなにやら落ち着きがない。

白骨精の洞窟では祝いの宴の準備。
「洞窟のろうそくは明るく、花は鮮やかに咲き誇る。悦びに満ちた笑顔は輝く。巧みに化けたが。三度も見破られ、危険に身をさらした。仏のお告げの布で悟空を破門させ、わざわい転じて福となった。念願の三蔵法師の肉。願いがかなって、不老不死。母上のお着きを待ち望む。母上とともに賞味しよう。」白骨精喜びの歌を歌い終ると、孫悟空が化けた金蟾大仙が到着。「三蔵法師を捕らえるとはたいしたものだ。三蔵法師は今どこに?」、白骨精の命令で妖怪たちに連れ出された三蔵法師たちが登場。捕らえられた猪八戒と対面。金蟾大仙に化けた孫悟空は沙悟浄と猪八戒をからかい、三蔵法師に一番弟子はどうしたと尋ねると、三蔵法師は「仏の教えに背いたので花果山に帰した。」と答える。すると白骨精は「おまえの肉を食うため、知恵を絞り、妖術を使っても悟空はあざむけなかったが、師弟の仲を裂く計略で、愚かな人間を騙して、暴れ猿を花果山に帰した。包丁を研ぎ、火をおこし、三蔵法師を食って不老不死。化けて見せてやるから目を覚ますがよい。」「娘よ、化けて見せておくれ。」「ご覧ください。」と村娘、老夫人、老人と変身。三蔵法師に「後悔してももう遅い、一生悔やむがいい。」騙されたことを悔やむ三蔵法師「悟空!わが弟子よ!」孫悟空を想うこの言葉に「お師匠様!」驚く白骨精「孫悟空ここにあり!」金蟾大仙は孫悟空の姿に戻る。
たちまち妖怪たちとの立ち回りが始まる。沙悟浄と猪八戒の立ち回り、続いて、次々に白骨精の部下たちを打ち負かす孫悟空。最後は、白骨精との戦い。形勢不利な白骨精は三蔵法師に許しを請うが、許されず炎の前で孫悟空たちに倒される。

そして再び旅のはじまり。大団円。

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