Wuthering Heights (1939)

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「嵐ヶ丘」(Wuthering Heights)は、エミリ・ブロンテ(Emily Bronte:1818-1848)が1847年、29才のときに書いた傑作小説です。W・サマセット・モーム(Wiliam Somerset Maugham)が「世界の十大小説」(Ten Novels And Their Authors, 1954)の一つに選んでいます。モームの「世界の十大小説」は19世紀までの作品から選ばれているため、現代人の感覚からはやや理解し難い作品もありますが、示唆に富んだ内容の斬新さ、文学的な影響力などからみて納得できるものです。人によっては選定意見が異なることは当たり前で、あれもこれもという意見は多くありますが、作品が書かれた時代とその文学的意義を考えれば、モームは極めて客観的に判断しています。ただ、モームは「Tellers of Tales」で若干の修正をして、現代人が読むべき小説の十選も挙げています。「Tellers of Tales」では「嵐ヶ丘」「白鯨」「トム・ジョーンズ」の三作品が選から外されています。この三作品は確かに一般的・普遍的ではないかもしれませんが、その反面で極めて個性的なもので、その個性的であるが故に熱烈な支持者を持っています。

エミリ・ブロンテは彼女の30年の短い人生の大半を、故郷であるヨークシャーのハワースで過ごし、その「嵐ヶ丘」の舞台で亡くなりました。ハワースの荒涼としたヒースの原野を散策し、物語の世界に夢中になりますが、実際の生活は質素で恋愛とも無関係です。人付き合いも苦手で無口、それでいて内面には激しい気性を秘めている女性でした。そんな限られた人間関係と閉鎖的な土地にあって、唯一の自分だけの世界が「嵐ヶ丘」のような文学世界でした。精神的には文学、物語の世界こそが彼女の本当の、そして自分自身を開放するものだったのでしょう。そこには孤独な少女が持っている激情、無邪気な残酷性が誰憚ることなく描かれています。普通の人間には理解しがたい性格、病的な考えや不気味な空想を類稀な文学的才能で描きだした世界は、姉の「ジェーン・エア」の作者であるシャーロット・ブロンテでさえも理解できないものでしたが、だからこそ誰もが描けなかった人間の暗部と激烈な愛情との相克を、主人公ヒースクリフ(Heathcliff=ヒースの崖の意)とキャサリンの情熱的で誇り高く、通常の恋愛さえも超越したダイナミックな運命的な愛の物語に結実させました。「嵐ヶ丘」は通常の宗教観や倫理観を超えた原初のあからさまな人間の本質に迫る物語と言えます。理解できる人、理解できない人を選ぶ作品でもあります。その特異さ故に万人向けとは言えませんが、文学史上の孤高の傑作です。

1939年の映画「嵐ヶ丘」は、ローレンス・オリビエがヒースクリフ、マール・オベロンがキャシー・リントン(キャサリン)を演じたウィリアム・ワイラーの監督作品で、アカデミー撮影賞を受賞しています。原作小説のゴシック風のおどろおどろしさは弱めて、ヒースクリフの復讐劇とキャシー・リントン(キャサリン)との激しい愛に焦点を絞っています。ローレンス・オリビエの見事な演技は注目。この映画で共演した、ローレンス・オリビエとマール・オベロンは相当仲が悪く、そのせいもあってかマール・オベロンの演技も悪くはないのですが、ヒースクリフとキャシー・リントン(キャサリン)の情熱的な愛情を表現しきれてないような気がします。キャシー・リントン(キャサリン)役がヴィヴィアン・リーであったならと思うのは、クラシック映画ファンなら誰もが考えることのようです。

嵐が丘:Wikipedia
「嵐が丘」のあらすじが読めます。発表当時は不評であったとありますが、これは間違い。野蛮で凶暴な作品という非難もありましたが、世の人気を得て重版されています。重版に際して、シャーロットが原文に手を加え、傑作を汚したと非難されたほどです。
嵐が丘 (1939年の映画):Wikipedia
エミリー・ブロンテ:Wikipedia

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