Sleeping Beauty – Once Upon a Dream English

「眠れる森の美女」生誕祝い

ウォルト・ディズニーの「眠れる森の美女」(Sleeping Beauty)は、イタリアのジャンバティスタ・バジーレ(Giambattista Basile, 1573-1632)の「ペンタメロン」に収められている「日と月とターリア」の童話、シャルル・ペロー(Charles Perrault, 1628-1703)の「過ぎし昔の物語ならびに教訓」に収められている「眠れる森の美女」、グリム童話「イバラ姫」を題材にしたウォルト・ディズニーのアニメ作品です。
現代的な視点で見ると、ディズニーは原作となる童話を忠実に描いていない、潜在的な人種差別の意識に基づく表現、登場人物が見られる、固定的な社会通念を与えるなど、問題視される点があります。
この「眠れる森の美女」もそのひとつに挙げられ、原作となる童話の残酷な点は省かれ、ストーリーも変更されている。更には、このお姫様は夫となる男性が現れることを待つだけの、そして主婦となることだけを考えている女性という批判です。ここで敢えてこの批判を考えてみます。原作であるグリムの「イバラ姫」も残酷な挿話を省いた物語にしています。そもそも童話、伝承は語られた時代を反映したもので、また語り部の創作も物語の内容を加除し、常に変化して伝えられるものです。ですからジャンバティスタ・バジーレ、シャルル・ペロー、グリム兄弟にしても、その記録したものが正確な原話である可能性は極めて低いのです。ですから、これをもってディズニー作品は原作に忠実でないと非難するのは少し筋が違うと思います。ディズニー作品もジャンバティスタ・バジーレ、シャルル・ペロー、グリム兄弟と同様にこの時代の解釈なのですから。また、もう一点の夫となる男性が現れることを待つお姫様が、保守的な社会通念の反映だとする考えについてですが、中世の王族の女性は、政略結婚が多く、自由に結婚相手を選ぶなど出来なかったのです。原作に忠実であれと言うなら、これは歴史に忠実な設定でもあります。
確かにウォルト・ディズニー作品には、白人優位、有色人種蔑視的な考えによる人物が登場します。これは彼が南部出身のためとも言えますが、映画公開当時の一般的なアメリカ人の通念でもありました。映画に登場する東洋人、黒人、インディアンたちがステレオタイプであるのは当時の観客が望んだからに他なりません。それを前提として観ることは、古い映画を鑑賞するうえでの基本的な姿勢です。
そこでようやく「眠れる森の美女」をあらためて鑑賞してみると、非難すべき点はありません。原作の残酷な点もありませんが、(この作品に敢えて残酷描写を入れる必要がどこにあるのでしょうか?)ストーリーはとてもスリリングです。そして何よりもアニメーションのの緻密な色彩と描写は驚異的です。ウォルト・ディズニーの存命中の長編アニメーションは、どの作品も高いクオリティがありました。手書きアニメーションのひとつの完成形と言ってよいと思います。特に「眠れる森の美女」の様式美は時代を感じさせない芸術作品としての美しさがあります。

眠れる森の美女Wikipedia
青空文庫「眠る森のお姫さま」(LA BELLE AU BOIS DORMANT)シャルル・ペロー

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です