<di
The Fabulous World of Jules Verne 1958(full)

カレル・ゼマン(Karel Zeman:1910-1989)はオーストリアハンガリー帝国(ボヘミア)生まれのアニメーション作家、映画監督です。フランスで広告・美術を学び、フランスのマルセイユで働いた後にチェコで創作活動を始め、1946年の「クリスマスの夢」で、同年のカンヌ映画祭アニメーション部門で最優秀賞を獲得して、ようやく認められました。彼のスタイルは凡そ、4つに分けられます。
第一の時期は、人形によるストップ・モーション、「クリスマスの夢」「鳥の宝島」などはこの時期の作品です。
第二の時期は、実写とミニチュア・モデルを巧みに合成して作られた作品で、「過去への旅」がその作品です。
第三の時期は、実写とアニメーションの合成で作られた作品で、「The Fabulous World of Jules Verne」や「ミュンヒハウゼンの冒険」(日本では『ほら男爵の冒険』といったほうが分りやすいですね。)、「二つの銃」、ヴェルヌ原作の「盗まれた飛行船」、「彗星に乗って」などの作品です。
最後期は、純粋な手書きアニメーションの作品で、洗練された童話的世界を追求しています。「船乗りシンドバッドの冒険」、「千夜一夜物語」、「クラバート」、「ホンジークとマジェンカ」などがその作品です。

「The Fabulous World of Jules Verne:1958」は英語の題名で、元は「Diabelskiego wynalazku」ジュール・ヴェルヌの冒険小説「悪魔の発明」を原作としています。1958年から1970年の時期の作品で、カレル・ゼマンの作品でも極めて独創性が高い作品です。
この作品でカレル・ゼマンは、ジュール・ヴェルヌの小説が書かれた時代のイメージを見事に具象化しています。それは現代科学とは異なる「世紀末ヨーロッパの空想科学」のイメージです。一部の科学者に委ねられた科学技術ではなく、「手が届きそうな科学の夢」です。だからこそ、この夢はとてもロマンチックなイメージに満ちています。ジュール・ヴェルヌの作品に描かれた科学技術が、現代から観れば非現実的なものであっても魅力を失わないのは、この「夢見た夢=空想」にあるのです。「The Fabulous World of Jules Verne」の作品はおそらくカレル・ゼマンにとっても少年時代の夢の具現化です。またそれはジュール・ヴェルヌの作品のファンが夢見る世界でもあります。コンピュータ・グラフィックが無い時代に、これほど精巧な特殊撮影を行うためは多くの労力を要したと思います。幼少期の精神体験はこれほど見事な作品を創り上げる原動力になるのです。心を躍らせた夢の世界を、映像として世界の子供たちに届けることに捧げた偉大なイリュージョニスト、それがカレル・ゼマンです。
カレル・ゼマンの追い求めた夢は、テリー・ギリアムやティム・バートンなどの映画監督や日本の宮崎駿のアニメーション作品にも大きな影響を与えています。


ヴェルヌの科学イメージ
(参考)ヴェルヌの時代の科学イメージ

カレル・ゼマン:Wikipedia
Karel Zeman:Wikipedia
Karel Zeman filmography ポーランド語サイト

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です