アメリカのポップスの歴史で欠かせないのがガールズ・グループです。1920年代から1940年代のThe Five Locust Sisters、The Boswell Sisters、Harmony Sisters、Andrews Sistersなどの「シスターズ」のコーラス・グループから、1950・1960年代のThe Ronettes、The Shirelles 、The Marvelettes 、The Dixie Cups、The Shangri-Las、The Supremesなどで、その後もいろいろなグループが出ています。
1940年代までは女性特有の美しいハーモニーを聴かせる白人によるグループで、1950・1960年代はロックンロールとともに、リズム感やビート、シャウトを重視したグループが好まれるようになり、それまでバック・コーラスであった黒人グループがようやく表舞台に出るチャンスが訪れたのは、これらの才能に勝っていたからです。この頃に魅力的なグループが男性女性を問わず、多いのもこのためです。
当時ガールズ・グループの歌は子供向けの音楽という認識が一般的でした。確かに歌う曲の内容は、恋愛に関するものがほとんどでしたが、この黒人によるアイドル・グループの出現は社会的には大きな意味がありました。それはこれらのグループに憧れた世代が、自然に人種差別や女性蔑視という理由の無い偏見から解き放たれるきっかけとなったからです。たかが歌と言えばそれまでですが、その歌を通して豊かな才能を認め合うことができたのです。それらの若い世代が形成されたからこそ、後の公民権運法も女性の社会進出も実を結ぶことができたのです。社会を変えたのは、一部の政治家や主導者だけの力ではなく、たかがポップスを聴いて、アイドルに憧れて育った偏見の無い人々の力でもあるのです。
美術史研究に、一枚の絵に描かれた象徴的な図像を綿密に読み解くことで、その絵の背景にある時代全体の形を解釈しようというイコノロジー(iconology:図像学)がありますが、同じように時代の社会現象を読み解くことでもこの方法は有効です。いわゆる考現学ですが、サブ・カルチャーであっても重要なことに変りはありません。政治学や経済学だけでは分らないことも見えてきます。ポピュラー音楽は重要なイコンが現れる分野なのです。(余談:21世紀の歴史には、ブログの研究も有効です。学術的、統計学的に研究すれば、画期的で偉大な歴史書が作れますよ。)
そんな堅い話は無しに、これらのグループにはとても身近に感じられる、紹介したい良い歌がたくさんあります。その始めがシフォンズです。ロリポップでない、品のあるセンスの良さが感じられるスタイルは今も魅力的です。

Chiffons – He’s So Fine

【いかした彼:歌詞】

Do-lang, do-lang, do-lang
Do-lang, do-lang
He’s so fine
(Do-lang, do-lang, do-lang)
Wish he were mine
(Do-lang, do-lang, do-lang)
That handsome boy over there
(Do-lang, do-lang, do-lang)
The one with the wavy hair
(Do-lang, do-lang, do-lang)
I don’t know how, I’m gonna do it
(Do-lang, do-lang, do-lang)
But I’m gonna make him mine
(Do-lang, do-lang, do-lang)
He’s the envy of all the girls
(Do-lang, do-lang, do-lang)
It’s just a matter of time
(Do-lang, do-lang)
He’s a soft spoken guy
(Do-lang, do-lang, do-lang)
Also seems kinda shy
(Do-lang, do-lang, do-lang)
Makes me wonder if I
(Do-lang, do-lang, do-lang)
Should even give him a try
(Do-lang, do-lang, do-lang)
But then I know he can’t shy
(Do-lang, do-lang, do-lang)
He can’t shy away forever
(Do-lang, do-lang,…

シフォンズ(The Chiffons)の1963年に全米№1なった「ヒーズ・ソー・ファイン」(He’s So Fine)はマネージャーも務めたレナルド・マック(Ronald Mack)の作品です。邦題は「いかした彼」でした。普通に「彼って素敵」と言ったほうが曲の内容が伝わります。彼がどれほど素敵なのかということよりも、彼を素敵だと思っている自分の気持ちを歌っています。恋する相手は素敵に見えるということです。そんなティーンエイジャーのとてもストレートな異性への憧れを歌っています。リードボーカルのジュディ・クレイグ(Judy Craig)の歌声は伸びやかで透明感があり、スマートで聴き易い、それでいて、打ち寄せる波のような圧倒感もあります。その心地よさがこの歌の魅力です。
ジョージ・ハリスンの「マイ・スイート・ロード」については、今さら多くを語る必要もありませんが、全米№1のヒット曲を故意に盗用するとは考えにくいので、やはり無意識に使用したということでしょう。それでも「マイ・スイート・ロード」も名曲で、名曲が形を変えて、新しい名曲になったと私は受け止めています。

Chiffons – One Fine Day

The Chiffonsの第3弾シングル「One Fine Day」(作詞Gerry Goffin、作曲Carole King)による「蝶々夫人」にインスパイアされて作られた曲。「One Fine Day」は「ある晴れた日に」(Un bel dì, vedremo)の英語訳、「もう一度会いましょう」という内容も共通性があります。軽快なロックンロール・ナンバーですが、歌の成り立ちにトリビアがあって、少し知的な感じとなっており、シフォンズの都会的なイメージに合っています。ドライブ感が心地良い曲です。

シフォンズの都会的なイメージということでは、次の「Down Down Down」は若者向けのガールズ・ポップス以上に、洗練されたメロディを聴かせる曲です。ジュディ・クレイグのボーカルは落ち着きがあり、彼女の実力ある歌唱力がよく分ります。

Chiffons – Down Down Down

The Chiffons:Wikipedia
the Chiffons History

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