Dr. Jekyll and Mr. Hyde (1920) [Silent Movie] [Horror]

「ジキル博士とハイド氏の奇妙な物語」(Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde:1886)は、ロバート・ルイス・スティーヴンソン(Robert Louis Stevenson)が「宝島」(Treasure Island)の3年後に書いた小説です。
スティーヴンソンは故郷であるエジンバラの18世紀のウィリアム・ブロディー(William Brodie)による犯罪からヒントを得てこの物語を書きました。ウィリアム・ブロディーは、エジンバラの市会議員やギルドの役員をしながら、泥棒などの犯罪を続けた人物で、エジンバラでは歴史的な犯罪者です。
犯罪者が表面的に善良な市民を装うことはよくある話ですが、スティーヴンソンはこれに二重人格という精神性と道徳的な善と悪とのジレンマをテーマにすることで、単なるゴシック小説を超える近代的な作品としました。この物語は一面では怪奇犯罪小説であり、また一面では怪奇小説の形を借りた観念小説でもあるのです。
そしてまた、この小説はイギリスのビクトリア朝期の近代都市における二面性をも象徴しています。物語の舞台はロンドンですが、スティーヴンソンの居たエジンバラにおいても旧市街と新市街の貧富や治安の差は多きく、華やかな表通りから狭く入り組んだ迷路のような路地を入ると、そこには犯罪が頻発する世界があったのです。
人間が少なからず持っている、あるいは抑えている「悪」の精神と理性の内なる戦い、また自分たちを取り巻く社会の二面性を、寓意として表現しているからこそ「ジキル博士とハイド氏」は人々に受け入れられたのです。

「ジキル博士とハイド氏」は、サイレント映画時代だけでも10回以上映画化されています。その中で最も有名なものは1920年の邦題「狂える悪魔」です。この作品は演劇一家のバリモア家の「バリモア三兄弟」で知られたひとり、ジョン・バリモア(John Barrymore:1882-1942)の名演によるところが大きいと思います。ハンサムなジョン・バリモアが知的な紳士ジキル博士と非情なハイド氏を見事に演じ分けています。(ちなみに、ジョン・バリモアは現在ハリウッドで活躍している女優ドリュー・バリモアの祖父にあたります。)この映画が今まで数多く作られた「ジキル博士とハイド氏」の中の最高作品だと思いますので、是非観てください。
1931年版のフレドリック・マーチ(Fredric March:1897-1975)が演じた「ジキル博士とハイド氏」は、ジョン・バリモアのリメイクといったものです。フレドリック・マーチは同年にバリモア一家(映画ではキャヴェンディッシ家)を描いたパラマウントの伝記映画「名門芸術」(The Royal Family of Groadsay)でジョン・バリモア役を演じています。


「ジキル博士とハイド氏」ポスター1920年版「ジキル博士とハイド氏」ポスター

ジキル博士とハイド氏:Wikipedia
「ジキルとハイド」katokt 訳:新字新仮名(青空文庫)
Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde:Wikipedia
The Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde at Project Gutenberg ver.1
ジョン・バリモア:Wikipedia
John Barrymore:Wikipedia
William Brodie:Wikipedia

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です