夜の大捜査線 予告編:In the Heat of the Night – Trailer


Scene from In The Heat Of The Night

「夜の大走査線」(In the Heat of the Night)はシドニー・ポワティエ(Sir Sidney Poitier KBE:1927-)とロッド・スタイガー(Rod Steiger:1925-2002)主演によるディテクティブ、サスペンス映画、1967年アカデミー賞で作品賞、主演男優賞(ロッド・スタイガー)、脚色賞、音響賞、編集賞を獲得しました。レイ・チャールス(Ray Charles Robinson:1930-2004)が歌う主題歌やクインシー・ジョーンズ(Quincy Delight Jones II:1933-)の音楽も印象深いのですが、今日は映画に関する記事のみを書きます。


Ray Charles – In The Heat Of The Night

シドニー・ポワティエは1963年の「野のユリ」で黒人初のアカデミー主演男優賞を獲得していたこともあって、この傑作映画では共演のロッド・スタイガーに主演男優賞を譲ったような形になりましたが、当時の公民権運動が盛んな社会状況において、黒人に対して漠然とした差別意識を持っている人間であっても、対話やお互いを理解しあうことで偏見を解くことができるという、この映画の殺人犯探しのサスペンスでない社会的テーマを演じたことが評価されたのだと思います。また、もう一人の主人公役のシドニー・ポワティエも、アカデミー主演男優賞を逃したとはいえ、人種差別が激しいアメリカ南部の片田舎にあって、理知的・理性的に行動する、人種を超えた素晴らしい人間像を演じました。この作品はシドニー・ポワティエ、ロッド・スタイガーどちらがアカデミー主演男優賞になってもよいものでしたが、当時の白人社会への啓蒙的な意味を込めて、アカデミー賞選考委員会はロッド・スタイガーを選択したのだと思います。

次に「夜の大走査線」と同年に製作された、スタンリー・クレーマー監督の「手錠のまゝの脱獄」に続く人種問題に関する作品「招かざる客」です。この映画ではシドニー・ポワティエ演じる黒人青年とキャサリン・ホーン(Kathryn Hahn) 演じる白人女性による恋人同士と白人女性の両親というプライベートな家族関係における人種問題を扱い、スペンサー・トレーシー(Spencer Tracy:1900-1967)の父とキャサリン・ヘップバーン(Katharine Houghton Hepburn:1907-2003)の母という名優たちが共演しました。ただこの映画ではシドニー・ポワティエは模範的な青年役に甘んじ、スペンサー・トレーシーとキャサリン・ヘップバーンによる両親の対外的なものと本音の心の葛藤がメインのドラマとなりました。このふたりの名優の演技が見ものなのですが、微妙な母親の感情を見事に演じたキャサリン・ヘップバーンがこの年のアカデミー主演女優賞を獲得しました。ただこの作品がスペンサー・トレーシー最後の出演作品であったこともあって、彼の名演がキャサリン・ヘップバーンに劣るものでなかったことも記しておきたいと思います。

1967年のアカデミー賞レースでは、台頭してきたアメリカン・ニュー・シネマ「俺たちに明日はない」(Bonnie and Clyde)や「卒業」(The Graduate)を抑えて、シドニー・ポワティエ出演作である人種問題に関する作品が高く評価されました。当時のハリウッドが保守的であったという意見もありますが、人種差別を廃するためにアメリカ社会に与えた影響、またはそうした理想を望んだ良心において、ふさわしい受賞であったと思います。

人種問題に関する作品として、1966年のシドニー・ポワティエ主演、ガイ・グリーンGuy Green OBE, BSC:1913–2005)監督の映画「いつか見た青い空」(A Patch of Blue)も忘れがたい秀作です、エリザベス・ハートマン(Elizabeth Hartman:1941-1987) が演じた目が不自由な女性セリナとシドニー・ポワティエが演じた黒人青年ゴードンの恋愛映画ですが、やはり人種問題を扱ったもので、結末の切なさが心に残る映画でした。

夜の大捜査線:Wikipedia
シドニー・ポワチエ:Wikipedia
ロッド・スタイガー:Wikipedia
招かれざる客:Wikipedia

2 thoughts on “In the Heat of the Night (1967)”

  1. mayumayuさん

    コメントありがとうございます。
    シドニー・ポアティエを中心にした記事ですが、『招かねざる客』と言えばスペンサー・トレイシーとキャサリーン・ヘップバーンのことを書かずにはいられませんでした。
    この時期はアメリカ映画にとって大きな転換期でしたが、良質なストーリーと名優たちの演技力が映画を支える基本であることを今に残したと思います。
    アメリカ映画は英語の発音がわかりにくくなったのは、日常スラングの多用もありますが、オーバーな演出や俳優の過剰すぎる感情表現による演技にもあると思います。人に伝わらないセリフ回しの映画を観ると昔の良い映画が懐かしくなる昨今です。

  2. いつも内容盛りだくさんで楽しい話題一杯。ありがとうございます。
    過日TVでキャサリーン・ヘップバーンの紹介番組を見て、初めてスペンサー・トレイシーとの事や『招かねざる客』への出演事情を知りました。(彼女の人柄が伝わり良い番組でした。)
    ショウビジネスの世界で個性を貫き通した稀なる女優さんですね。多分これから先も彼女のような方は出ないかも?それにしても昔のアメリカ映画は英語の発音がわかり易くて助かります。哀しいかな、今のはサッパリ分かりません。
    何年か前のアカデミー賞授賞式で久しぶりにシドニー・ポアティエが登場・・・時の流れを感じてしみじみしました。

magictrain にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です