『「煙が目にしみる」アイリーン・ダン/ザ・プラターズ』から思い出したスティーヴン・スピルバーグ(Steven Allan Spielberg:1946-)監督作品「オールウェイズ」(Always:1989)です。
この映画はオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn:1929-1993)の最後の出演作です。オードリー・ヘプバーンはリチャード・ドレイファス(Richard Stephen Dreyfuss:1947-)演じる主人公ピートが出会う天使ハップ役で出演し、この作品をもって女優業を引退しました。言ってみればこれはスピルバーグが憧れの大女優に贈ったオマージュ、最後の花束です。それでもこの天使の役は映画「グッバイガール」でアカデミー主演男優賞を獲得した、リチャード・ドレイファスの存在感をを凌ぐ威厳が要求される重要な役で、オードリー・ヘプバーンの気品と威厳ある優しい天使の演技は他の誰よりも適役だったと思います。

映画「オールウェイズ」は1943年のアメリカ映画「ジョーと呼ばれた男」(A Guy Named Joe)のリメイク作品です。「ジョーと呼ばれた男」は第二次世界大戦中の空中消火( aerial fire fighting)の飛行機乗りの話で、主人公は若い恋人同士の上官で、三角関係はありません。この設定以外、登場人物の名前やストーリー展開は、「オールウェイズ」とほぼ同様ですが、映画から受ける感動はまったく別のものです。「ジョーと呼ばれた男」では若い部下の成長と幸せを願う愛情、「オールウェイズ」では恋人の将来、幸せを願う愛情です。リチャード・ドレイファスにあたるピート役は名優スペンサー・トレーシー(Spencer Tracy:1900-1967)、ホリー・ハンターにあたるドリンダ役はアイリーン・ダンが演じました。スペンサー・トレーシーの貫禄に親友リチャード・ドレイファスが匹敵するまで、スティーヴン・スピルバーグはこの映画の構想を暖め続けていたのだと思います。また、共演のアイリーン・ダンについてですが、ここでもう気付かれたかと思いますが、「オールウェイズ」で使われた「煙が目にしみる」(Smoke Gets in Your Eyes)の歌は、実はアイリーン・ダンへのスティーヴン・スピルバーグの間接的なオマージュでもありました。戦後第一世代のスティーヴン・スピルバーグにとって、戦前戦後を通じて愛された大女優への憧れは、アイリーン・ダンの出演作のリメイクを考えたとき、自然と彼女が「煙が目にしみる」を歌った名シーンと結び付いたのだと思います。

スティーヴン・スピルバーグはハリウッドのヒット・メーカーとして早くから頭角を現し、TVではできない映画ならではエンターテインメント色が強い作品で、映画会社に莫大な興行的収入をもたらし、その結果、斜陽であった映画産業の復興に多大な貢献を果たしました。しかし、その一方で社会派作品を好む映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の会員たちからは、長らく無視と言ってもよいほどの冷遇を受けました。そのため「シンドラーのリスト」でアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞したのは監督業を始めてから22年経った1993年でした。(今はアメリカ映画アカデミー会員です。)
しかしスティーヴン・スピルバーグは誰にも増して歴史あるアメリカ映画の本質・良さを理解し、愛している人であるのは確かです。映画「オールウェイズ」はそんなスティーヴン・スピルバーグの映画と憧れの大女優たちへの愛情を込めた作品でした。

Always – Dance Scene

【煙が目にしみる:Smoke Gets In Your Eyes 歌詞】

They asked me how I knew my true love was true,
I of course replied, something here inside cannot be denied.
They said someday you’ll find all who love are blind,
When your heart’s on fire, you must realize,
Smoke gets in your eyes.
So I chaffed and then I gaily laughed,
To think that they could doubt my love,
Yet today, my love has flown away,
I am without my love.
Now laughing friends deride tears I cannot hide,
So I smile and say when a lovely flame dies,
Smoke gets in your eyes.

【煙が目にしみる(意訳)】

どうして私の恋が本当だって分るのかと聞かれたけれど、
もちろん私の心の中にある拒めぬ何かがあるからだって応えたわ。
いつの日か恋は盲目だと分るさとみんな言ったわ、
君のハートが燃えさかっているときは、知っておかなければいけないよ
煙が君の目に入っているのさ。
だから私はひやかして、それから陽気に笑って見せたの、
私の恋(人)を疑うことを考えるなんてと、
でも今日、私の恋(人)は飛び去ってしまったの、
私は恋(人)を無くしてしまったわ。
今では、涙を隠すことができない私を友人たちは嘲り笑っているわ、
だから私は微笑んで言うの、素敵な炎が消えてしまうときには、
煙が目に入るのだって。

「オールウェイズ」予告編(Always:1989)

「ジョーと呼ばれた男」予告編(A Guy Named Joe:1943)
Van Johnson Spencer Tracy Irene Dunne Ward Bond James Gleason

Irene Dunne sings Wishing (Will Make it So)
アイリーン・ダンの素敵な歌を一曲。上の動画の中のシャルル・ボワイエ(Charles Boyer:1899-1978)との共演作 「邂逅 (めぐりあい)」(Love Affair:1939)のアイリーン・ダンのスカーフの巻き方は日本映画「君の名は」での岸恵子さんの「真知子巻き(知っている?)」のヒントになったものだと思います。戦前のハリウッドの恋愛映画は戦後の日本の恋愛映画の手本となっています。(日本ではそれまでそんな映画を作ったことがなかったのですから当然と言えば当然です。)

Wishing will make it so
just keep on wishing and care will go
Dreamers tell us dreams come true
It’s no mistake
Wishing are the dreams we dream when we’re awake
The curtain of night will pass
If you are certain within your heart
So if you wish long enough wish strong enough
You will come to know
Wishing will make it so

Just imagine that you are
Back in childhood days
Wishing on the evening star
For a load of hay
It worked wonders for you then
Who knows why or how
Though your older try again
It can help you now

Wishing will make it so
just keep on wishing and care will go
Dreamers tell us dreams come true
It’s no mistake
Wishing are the dreams we dream when we’re awake
The curtain of night will pass
If you are certain within your heart
So if you wish long enough wish strong enough
You will come to know
Wishing will make it so

オールウェイズ (映画):Wikipedia
スティーヴン・スピルバーグ:Wikipedia

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