「八十日間世界一周」(Il Giro Del Mondo In 80 Giorni/Around The World In 80 Days)はフランスの作家ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne:1828-1905)の1872年の冒険小説です。
そして、この小説を題材とした1956年のユナイテッド・アーティスツ映画「八十日間世界一周」(Around the World in 80 Days)ビクター・ヤングの主題歌としても有名です。


Around the World In 80 Days (1956) Official Trailer


Victor Young – Around the World in 80 Days (1956) – Suite

まず、この小説のことですが、日本で始めて翻訳出版されたジュール・ヴェルヌの作品としても有名です。1878年(明治11年)に劇作家・フランス文学者、川島順平の父で翻訳家・銀行家の川島忠之助が「新説八十日間世界一周」として前編を翻訳しました。江戸時代の風俗が残る明治初期にあって、欧米の海外事情を伺うことができるこの小説は文明開化の風潮に乗って、人々に西洋文明への驚きと憧れをもたらし人気を得ました。後に日本の海外侵攻を経済的に支えた横浜正金銀行の役員となった川島忠之助にとっては、庶民に対する植民地主義時代の国際的な理解の啓蒙としての意義があったのだとも思います。と言っても、読者の興味は主人公フィリアス・フォッグとパスパルトゥー、そしてインドから加わるアウダたちの行く先で遭遇する、一行を追うスコットランド・ヤードの刑事、フィックスの妨害、予期せぬ困難とその克服などの胸躍る冒険談です。明治の読者にとっては十返舎一九の「東海道中膝栗毛」の延長線上の旅行記ものとして興味深かったと思います。元々ジュール・ヴェルヌの小説には社会性や政治性は希薄です。それはジュール・ヴェルヌが楽観主義者であったからではありません。むしろ彼は人類の将来に対しては悲観的でしたが、作品では正義や勇気、夢や希望など前向きな人間の物語を書きました。それは見方によれば、現実離れした物語かもしれませんが、人間性の良い面を讃えるものでした。ジュール・ヴェルヌについて語るとき、誰もが彼の予見性を重視しますが、彼の小説の本質にあるのは、世界中の人間に対して差別意識を持たないヒューマニズムです。世界中のジュール・ヴェルヌのファンが彼の小説を愛する理由は、実はそこにこそあるのだと思います。そして「八十日間世界一周」はこうしたジュール・ヴェルヌらしい要素が一番良く出た傑作です。
こうしたジュール・ヴェルヌの文学の本質を見ず、奇抜なストーリーを重視した明治時代の日本の文学界では、彼の小説は単なる通俗小説として受け取られていました。そしてその後も、このジュール・ヴェルヌへの文学的な過小評価は長く続きました。(もしかすると今も)?

次に、この主題歌のについて書きます。内容は本当に愛する人に巡り合うため世界中を廻るというもので、短い歌詞ながらロマンチックな主題の起承転結がはっきりと分かりますし、聴く者の興味と想像力を掻きたてる素晴らしいものです。パリのことを昔の愛称としているのは、物語の時代に合わせてイメージを損なわない工夫でもあります。
この歌の題名は正式には映画と同じ「Around the World In 80 Days」ですが、日本では単に「アラウンド・ザ・ワールド」として認知されており、 ナット・キング・コール、ザ・コーデッツ、ハリー・ジェームスなどの歌唱で今も世界中で愛されています。


Nat King Cole – Around The World


Chordettes – Around the World in 80 Days

【Around the World 歌詞】

Around The World I’ve searched for you,
I travelled on when hope was gone to keep a rendezvous,
I knew, Somewhere, sometime somehow
you’d look at me, And I would see,
the smile you’re smiling now,

It might have been in County Down
or in New York in gay Paree or even London Town,
No more will I go all Around The World
for I have found my world in you

It might have been in County Down
or in New York in gay Paree or even London Town,
No more will I go all Around The World
for I have found my world in you

【歌詞和訳】

世界を周り私はあなたのために探していた
私はときに希望が消えようとも旅を続けた
私は知っていた、どこか、いつか、どのように
あなたは私を見ていただろう、そして私も見つけた
笑顔を、あなたが今ほほ笑むのを

あれは田舎町かもしれません
あるいはニューヨーク、ゲイパリー(Gay Paree)かもロンドンの街かも
もう世界をめぐることはない
だって私はこの世界で君を見つけたのだから

あれは田舎町かもしれません
あるいはニューヨーク、ゲイパリー(Gay Paree)かもロンドンの街かも
もう世界をめぐることはない
だって私はこの世界で君を見つけたのだから

※(Gay Paree)とは第一次世界大戦以前の華やかなベルエポック時代のパリのことです。
※「County Down」を田舎町と訳しましたが、当時の大都市ニューヨーク、パリ、ロンドン以外と異なる国と解釈したほうが良いのかもしれません。

八十日間世界一周:Wikipedia
八十日間世界一周 (映画):Wikipedia

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