或る夜の出来事:It Happened One Night (1934)

監督 : フランク・キャプラ
脚色 : ロバート・リスキン
原作 : サミュエル・ホプキンス・アダムス
撮影 : ジョセフ・ウォーカー
主演 : クラーク・ゲーブル (Peter Worne)、 クローデット・コルベール (Ellie)

1934年のクラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール主演のコロンビア映画「或る夜の出来事」(It Happened One Night)です。
同年の第7回アカデミー賞では主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞を受賞したフランク・キャプラ(Frank Russell Capra:1897-1991)監督の傑作ロマンティック・コメディ(スクリューボール・コメディ:Screwball comedy)です。スクリューボールは野球の変化球シンカーのことで、スクリューボール・コメディは捻りを効かせたラブ・ロマンスのことです。身分階層や社会的立場、性格や考え方が違う、個性ある男女出会って繰り広げる物語は、異なるカルチャーのぶつかり合いの面白さがあります。「或る夜の出来事」はこの分野における最初の映画で、この映画の成功によって、戦前には多くの亜流映画が製作されました。また現在の恋愛映画の多くが、工夫を凝らしながら、この映画の基本的な設定を倣っています。
この映画の簡単なあらすじは、わがままで世間知らずな令嬢エリー。彼女は大富豪の父親の反対を押し切って、プレイボーイの飛行機乗りと結婚すべく逃走し、夜行バスに乗ってマイアミからニューヨークに向かいます。同じバスに乗り合わせた売れない新聞記者ピーターは彼女が失踪した令嬢と知り、彼女を取材するために同行することになります。この二人が短い旅で繰り広げる様々な出来事と会話、そして二人の間に恋が芽生え…。
ここまで書けば、その後に製作されたの恋愛映画に、同様なプロットが多くあることに気付かれると思います。あの有名な「ローマの休日」も、この映画がなければ作られなかったかもしれません。

クラーク・ゲーブルは、「風と共に去りぬ」(Gone with the Wind:1939)のレッド・バトラー役が最も有名ですが、この映画での男らしさとコメディ・センスを併せ持った演技も魅力的でした。後年では、ドリス・デイと共演した「先生のお気に入り」(Teacher’s Pet:1958)もそうしたゲーブルの演技が見られました。
クローデット・コルベール(Claudette Colbert:1903-1996)は、パリ生まれで8才のときに両親と共にアメリカに渡り、1923年、20才でブロードウェイの舞台に出演しました。無声映画時代にフランク・キャプラが監督したファースト・ナショナル映画「力漕一挺身」(For The Love Of Mike:1927)に出演しました。トーキー時代になって、ニューヨークに撮影所を持っていたパラマウント映画は、ブロードウェイの俳優を起用することが多く、クローデット・コルベールもその一人ですが、彼女の演技力とコケティッシュな魅力で多くの作品に出演し、人気女優となりました。余談ですが、彼女は左頬からでないとクローズ・アップを撮らせませんでした。
無声映画からトーキーに変わり、既に大スターであったMGM専属の「キング・オブ・ハリウッド」クラーク・ゲーブルとパラマウント映画専属のクローデット・コルベールは、コロムビア映画に貸し出されるという形で、この映画に出演しました。当時は自社作品の合間に、専属スターを他社プロダクションへ貸し出すことも映画会社の重要な収入源だったのです。云わばサイド・ビジネス、スターにとっては乗り気のしない仕事でしたが、この映画は大成功を収め、コロムビア映画の躍進の基礎、監督フランク・キャプラ の出世作、クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベールにとっても代表作のひとつとなったのは少し皮肉なことです。
「或る夜の出来事」は文字通り、恋愛映画の画期的な作品です。スクリューボール・コメディの最初で最高の作品ですので、映画ファンならば必見です。

参考:
映画に出てくる「エリコの壁」(=ジェリコの壁:Walls of Jericho)は、ヘブライ聖書ヨシュア記にある四海のほとりにあった世界最古の町エリコ(ジェリコ)の城壁のことで、「絶対に崩れない物」の喩えとされています。モーセの後継者ヨシュアが神に命じられて、ヨルダン川を渡るためにこの町を攻めたときに、イスラエルの民が契約の箱を担いで7日間城壁の周りを廻り、角笛を吹くと崩れたと書かれています。

或る夜の出来事:Wikipedia
フランク・キャプラ:Wikipedia

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